睡眠時無呼吸症候群と簡易PSG検査のご案内
「最近いびきがひどい」「日中に強い眠気がある」「朝起きても疲れが取れない」
そんな症状は、もしかすると睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインかもしれません。
この病気は、眠っている間に呼吸が止まる・浅くなる状態が繰り返されることで、体に酸素が十分に行き渡らず、さまざまな健康リスクを引き起こします。
放置するとどうなるの?
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、以下のような合併症や生活への影響が生じる可能性があります。
- 高血圧・心疾患・脳卒中など、命に関わる病気のリスクが上昇
- 糖尿病の悪化やインスリン抵抗性の増加
- 日中の強い眠気や集中力の低下による交通事故・労働災害のリスク
- うつ症状や記憶力の低下など、精神的な不調にもつながることがあります
「ただのいびき」「年齢のせい」と思っているうちに、症状が進行してしまうことも少なくありません。ご自身やご家族に心当たりがある場合は、早めの検査が安心への第一歩です。
心血管系の疾患
- 高血圧:夜間の無呼吸で交感神経が過剰に働き、血圧が持続的に上昇。
- 心不全や心筋梗塞:酸素不足が心臓に負担をかけ、心筋への血流が不足。
- 不整脈(心房細動など):低酸素状態が心臓の電気的安定性を乱す。
- 狭心症:冠動脈の動脈硬化が進行し、心臓への血流が減少。
脳血管疾患
- 脳梗塞や脳出血:SAS患者は脳血管疾患のリスクが2〜4倍に上昇。
- 突然死:重症SASでは健常者の約2.6倍の死亡率が報告されている。
代謝性疾患
- 糖尿病:睡眠の質の低下がインスリン抵抗性を高め、血糖コントロールが悪化。
社会的リスク
- 交通事故や労働災害:日中の強い眠気により、事故率が健常者の約2.5倍に。
- 集中力や記憶力の低下:睡眠の質が悪化し、仕事や日常生活に支障をきたす。
当院の簡易PSG検査について
当院では、ご自宅で行える簡易PSG検査(ポリソムノグラフィー)を実施しています。入院の必要はなく、普段通りの環境で眠りながら、睡眠中の呼吸状態を記録できる検査です。
検査の流れ
- 医師による問診と症状の確認
- 検査機器の使い方をご説明し、機器をお持ち帰りいただきます
- ご自宅で一晩、センサーを装着して就寝
- 翌日または後日、機器をご返却いただき、医師がデータを解析
- 後日、結果に応じて、治療や精密検査の必要性をお伝えいたします
検査でわかること
- 無呼吸・低呼吸の回数(AHI)
- 睡眠中の酸素濃度の変化
- 呼吸の乱れや努力呼吸の有無 など
検査をおすすめしたい方
- 家族から「いびきがうるさい」「呼吸が止まっていた」と言われた方
- 朝起きても疲れが残る方
- 朝起きた時に頭痛がする方
- 日中の眠気や集中力の低下が気になる方
- その他、下記に該当する方

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査が推奨される既往歴(過去にかかったことのある病気)には、呼吸・循環・代謝・神経系に関わる疾患が多く含まれます。以下のような既往歴がある方は、特に検査を検討すべきとされています。
心血管系の既往歴
- 高血圧(特に治療抵抗性の場合)
- 心不全
- 心筋梗塞や狭心症
- 不整脈(心房細動など)
- 脳梗塞・脳出血の既往
- これらはSASによる夜間の低酸素状態が悪化要因となるため、再発予防の観点からも重要です。

代謝性疾患
- 2型糖尿病
- 脂質異常症
- 肥満(BMI≧30) ~ 詳細は後述
- インスリン抵抗性や脂質代謝異常は、SASと相互に悪影響を及ぼすことが知られています。
呼吸器疾患
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 気管支喘息(特に夜間悪化型)
- 呼吸機能が低下していると、SASとの合併で重症化しやすくなります。
神経・精神疾患
- うつ病・不安障害
- 認知症の初期症状
- てんかん
- 睡眠の質が悪化することで、精神・神経症状が増悪する可能性があります。
顎・口腔の構造異常
- 小顎症(下顎後退)
- 扁桃肥大・アデノイド肥大
- 鼻中隔湾曲・慢性鼻炎
- これらは気道閉塞の物理的要因となり、閉塞型SASのリスクを高めます。
肥満の方
肥満の方は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査を強く推奨されます。医学的にも、肥満はSASの最大のリスク因子のひとつとされています。
なぜ肥満でSASのリスクが高まるのか?
- 首回りの脂肪が気道を圧迫し、睡眠中に空気の通り道が狭くなる
- 舌の付け根にも脂肪が蓄積され、仰向けで寝ると気道を塞ぎやすくなる
- 腹部脂肪が肺を圧迫し、呼吸の予備能力が低下
- ホルモンバランスの乱れ(レプチン抵抗性・グレリン増加)で食欲が増し、悪循環に

肥満とSASの相関データ
肥満度(BMI) | SASの発症率 | 備考 |
---|---|---|
BMI 25以上(肥満1度) | 軽症〜中等症のSASが多く見られる | 日本人の約30%が該当 |
BMI 30以上(肥満2度) | 約60%が軽症、26%が中等症のSAS | |
BMI 40以上(肥満4度) | 約98%が軽症、33%が中等症のSAS |
- さらに、体重が10kg増えるごとにSASのリスクが2倍、BMIが6増えるごとに4倍になるという報告もあります。
安心して受けられる検査です
検査機器は軽量で、装着も簡単。痛みや副作用はありません。ご不安な点があれば、スタッフが丁寧にご説明いたします。
「眠りの質」は、健康の土台です。気になる症状がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

検査費用
- 1割負担・・・900円
- 2割負担・・・1,800円
- 3割負担・・・2,700円
- 上記に加えて、「初診料」または「再診料」がかかります。
初診料
- 1割負担・・・400円
- 2割負担・・・800円
- 3割負担・・・1,190円
再診料
- 1割負担・・・140円
- 2割負担・・・280円
- 3割負担・・・420円
- その他、症状によっては関連する検査が必要になる場合があり、その費用が追加でかかる場合がございます。